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2013.11.06

中小の公共図書館の法律情報サービス

 中小の公共図書館の法律情報サービスは、紋切り型でいい。
 普通にマトモに図書館をやっていれば、実は意識しなくても法律情報サービスは行われていることが多い。
 しかし、日常知らぬところで働いている自館蔵書の機能を自覚しているかどうかが、大きな分水嶺となる。
 自覚してさえいれば、自館蔵書のもつ射程の範囲を知り、必要に応じてより専門性の高い資料をもつ大規模館の案内や、実務家への誘導もサービスに組み込まれてくる。

 具体的には、次の二点だけでいい。
・一定の論点・主題を網羅した叢書を揃えておくこと。
・法テラス・消費生活センター・男女共同参画センター等専門相談機関のパンフレットを常備し、必要に応じて案内すること。

 課題解決支援サービスの中でも、医療情報支援やビジネス支援は、奥が深かったり幅が広い。
 それに対して、法律情報サービスは、法律専門家でない一般市民を利用層としている公共図書館にとっては、課題・論点は多くはなく、限定された範囲でカバーできると言ってよい。

 例として、法テラスのパンフレットQ&Aシリーズを挙げる。
 法テラス - 刊行物・パンフレット 
 「DV」「離婚問題」「相続問題」「労働問題」「建物賃貸借問題」「多重債務問題」「成年後見問題」「身近なトラブル」「消費者トラブル」「近隣トラブル」。
 法テラス - 法律相談ご希望の方へ
 このページではより詳細化されているが、上のQ&Aと重なるトピックが多い。

 これらの課題は、一人の人生で見れば直面することは多くなく、しかし誰でもが直面しうる問題である。したがって、利用者一人一人が、課題を意識しづらいという特性をもっている。
 また、法的課題の特徴としては、多くの利用者が「身近な他人に相談しにくい」点がある。文献利用としては、レクリエーションとしての読書ではないし、淡々とした論文調査でもない。悩ましいトラブルへの対処であって、専門家に相談して解決に至る情報を得たいものだ。専門家が近くにいなければ、またいたとしても別の専門家の見解も知りたい。
 外からはニーズが見えにくい、しかしだからこそ「専門家が書いた解説資料」が必要とされる。そんな特徴がある。
 法律情報は、いざというときに入手しうる態勢が、一定程度は社会的に整っていてしかるべき、共有されるべき情報である。
 正にセーフティネット、公共サービスとして図書館が担うべき分野である。紋切り型でなくてはならないのだ。

 個別の案件の相談となったとき(法律相談)、それは文献提供(課題解決「支援」)のレベル=図書館業務の範疇でなくなるだけである。そのために法律専門家がいるのだから、職分を弁えればよい。突き放して接するとかいうことではなく、悩める利用者を前にして、図書館ができることをするだけだ。

 改めて言い換える。
 法的な課題解決支援は、一定の論点を網羅した解説書を、館の規模に応じて揃えておきさえすれば、利用者はむしろ黙って借りていく。実際に、利用されているはずである。目的が違うのだから、雑誌やベストセラーのような回転率ではないが、一定のニーズのある、必要な資料として。
 図書館に必要なのは、市民生活で起こるトラブルを論点とした資料を意識的に揃えること、分類や蔵書の中にどの論点が織り込まれているのかを確認しておき、利用者が資料に到達できるように誘導、個別の相談のために窓口を設けている機関を尋ねられたときに対応できる地域の案内情報を準備することである。
 小規模であったとしても、普通の図書館であれば、少し自覚するだけで、充分対処できる。自館が提供できる「程度」を自覚していればよい。
 これに加えて、電子政府時代のデータベース活用ができるようになり、次の手がかりとして無料の法令・判例情報の入手までできていれば、中小の公共図書館としては充分であろう。

 法律情報サービスは、ほかの課題解決支援、医療情報支援やビジネス支援の領域の広さからすれば狭い。主要論点を押さえた資料を一通り揃えておけば、蔵書規模が小さくても、事実上資料が語るべきを語ってくれる。小さな図書館では、320門が一連なくてもしかたがないだろう。そうであっても、役に立つ。反面、そのありきたりさを当たり前のようにこなしている図書館が、普通に、数多くあるに違いない。
 しかし、強調しておきたい。何度も「(頑張らなくても)自覚しておくこと」を繰り返した。その小さなコレクションが整えられていることこそが「サービス」であり、目立たないニーズを受け止めている。中小といえど公共図書館である以上、自館が対応する"市民目線"での必要性を意識しなくてはならない。その物言わぬ「利用」を意識しているかどうか。その意識が頭のどこかに引っかかっていれば、次のサービス展開につながるはずだ。
 ユーザーが自覚しにくい、見えにくいニーズを拾う。「マーケティング」にそうした視点が含まれているか否か。

 サービスの前提となる法律資料には、独自の特殊性がありながらも、分類や法体系、雑誌記事、引用や略号、索引…図書館資料としての性格が典型的に表れる。法律学は、普通の図書館や文献学がなければ成立しない。
 「普通の図書館である」ということが、法律情報サービスにとっては、必要な条件である。

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