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2013.11.07

武雄市図書館訪問メモ(1)法律書の同一タイトル版違い(千代田ネタ付)

武雄市図書館を訪問した際、法律情報サービスの可能性に焦点を絞って見た。
とりあえず、メモをアップしていく。
樋渡市長側・CCCの、武雄市図書館のコンセプト(改善点)も拝聴しているのだが、すみません、あとまわし。

本記事に関係する「コンセプト(改善点)」は、「書庫と事務室をぶち抜いて、開架で利用できる資料を20万冊にしました」ということである。

千代田図書館もバックヤードが充分にない図書館で、同一タイトルで異版が複数件見つかったことがある。やはり法律の分類で、それも同じ段で!
自分の生活課題に役立つ資料がないか探していたときだったので、図書館員としての目ではない。
つまり利用者として、「…そりゃ、図書館としてダメだろう…スタッフが棚、見てないんじゃん…」と思った瞬間だった。

千代田図書館の名誉のために書いておくが、三代めだったかの館長に、横浜市立図書館OGの方が就任。
蔵書構成がひどいことにすぐに気がついて、図書館界の様々なところに声をかけ、千代田図書館のダメなところを指摘してもらうよう依頼がまわった。
自分も、知人に、上記の経験を伝えてもらった。

裏返して言えば、初代と二代めの館長は、図書館員としては評価できない、と言ってよい。
現場を知らない政策屋だったり、現場をトータルに見ることができなかった実務家だったのではないか。
指定管理で調達してきた図書館員が、その図書館の経験が少ないことは自明である。
異版が放置してある、ということは、図書館運営数年の蓄積が、そのまま表れている。

しかし、千代田図書館も、利用者として使ってみたとき、いいところもあった。
図書館がいい図書館かどうかは、具体的にここがこう、これがこうと、実際に「使う視線」に立ったときだと思っている。
はっきり言えば、見た目とか雰囲気はどうでもよい。
図書館は本屋ではない。
建物や調度類は古くなっていくのは当たり前で、勝負は蔵書やサービスである。
かつて千代田図書館を見に行って、ブログに書いたような方々には、ぜひ再度、このような視線で点検しに行ってもらいたい。やっぱり「いい図書館だった」と書くのだったら、その感覚は本物である。Library of the Yearの関係者とか、どうなのかね。

さて、「(原則)書庫をなくした」ということを売りにしたことが、「図書館」としてどうなのか。
既に千代田図書館の例があったので、よもやと思いつつ、点検した。
……途中から、メモを採り始めた。通り過ぎてきた棚も、もう一度戻って、メモした。
法律関連の棚を、なんとか見終わった時点で、ため息をついた。
その一部が、以下である。標題の件に限って、整理した。

-----
「社会」の棚。
はじめの一歩 労働災害・通勤災害のことならこの一冊 初版と改訂2版

「政治」の棚。
新・国会事典 初版と第2版

「法律」の棚。
行政法がわかった 改訂第2版と改訂第5版
契約書式の作成全集 初版と改訂版
図解雑学商法 初版と改訂新版
医事法入門 初版と第2版と第3版
医療事故の知識とQ&A 改訂版と改訂第2版と改訂第3版
時効 2001年改訂版と2005年改訂版
最新著作権の基本と仕組みがよくわかる本 初版と第2版
隣り近所の法律知識 2001年改訂新版と2003年改訂版と2007年改訂新版
法律学小辞典 第3版と第4版補訂版
図解による法律用語辞典 全訂版と補訂4版
くらしの法律相談ハンドブック 1996年版と2001年版と2011年版
なるほど図解独禁法のしくみ 初版と第3版
法律を読む技術・学ぶ技術 初版と第2版
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参考までに、単行本の一般法令集は次の通り。

六法全書 平成9年版~平成12年版。
ポケット六法 平成15年版、19、21、22、23年版。

ほかに、加除式の総合法令集が備えられていた。
加除については、「いいところ」として別記事に書く。


閑話休題、メモである。
単に件数が問題なのではない。
同一タイトルの異版が三件も並ぶことが、こんなにはなかった。さすがに千代田でも(でも、あったんですよ)。

考えてみれば、書庫におろしていた本も出してきたのだから、異版も出てくるのは当然といえば当然だ。
事典類は、利用が集中した場合は旧版でも利用していただくこともある、という好意的な見方もできないでもない。
もちろん、旧制度を調べたい人は当時の解説書が必要、なわけだが…武雄市図書館は小規模な図書館で、そのような観点での調査研究をするための蔵書構成はしていない。商法の解説書の異版がずらり並んだ県立図書館の書庫とは、雲泥の差である。

開架と書庫というのは、図書館にとって当たり前のしくみであり、一般市民にとっても、普通に時系列を意識させるための機能である。
開架にあるものは、新しい本なんだ、と。

どうだろうか。
典型的なところでは、「労働災害」とか「医療事故」の本が、版違いで一緒に開架されている、というのは。

はっきり言おう。
法律は改正され、判例も新しいものが加わり、制度は少しずつ変わる。これは、法律情報サービスの基本である。
旧版を残しておくということは、誤った情報を提供してしまうかもしれないのである。

見学にお邪魔した際、市長側と思しき図書館員が、「アーカイブとしての機能は放棄しましたから」。
そう、CCCがそのようなコンセプトで襲ってきたんだから、現場としては従わざるを得ない。

その結果がこれである。
ちなみに、同一タイトルの異版が同じところになく、離れた棚に泣き別れていた例も相当あったことを付け加えておく。
そういえば、上のリストの中に、商法の本がある。同じような題名の会社法もあったが、メモには加えなかった。もちろん、商法から会社法が独立新設されたときの改版のはずである。

あまりにあんまりなので、レファレンスカウンターにいた、図書館員にお伝えした。
おそらくは嘱託の、CCCに雇用替えされた方だろう、「問題」であろうという認識はすぐに飲み込んでいただけた。
「書き写させてもらえますか」「いや、直接現物を見た方が早いですよ。数が数なので」
棚を一緒にまわって、「ココです」「それとココ」…とお知らせした。
古い本だって、意識して使えば役に立つ。一概に悪いとは言えない、でも本当は書庫さえあれば…というような話をこちらからしながら、一緒にまわった。
開架からあれらの異版を廃棄するのがいいのかどうか。普通だったら、開架に置くことはしない。あれから、しばらく経っているが、旧版は廃棄したのだろうか。

このことで、武雄市図書館は「普通でない図書館」であるということを痛感させられた。
法律情報サービスを行うに当たって、必要な条件を欠いている。

ああ、そうそう。いしかわまりこほか『リーガル・リサーチ』がありませんでした。
法情報調査では、定番の参考図書なんだけれどねえ。高い本じゃないです。

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Comments

そんなことになっているのですね。

Posted by: ムムリク | 2013.11.08 at 09:31

はじめまして、武雄で図書館を学習する市民の会を立ち上げた井上です。図書館の運営や配架などよくわからずに運動をしています。本当は今までの図書館関係者が会に参加していればそのようなことも教えていただけるのですがそれができていません。その中で学習させていただく貴重なコメントです。ようやく、専門的なご意見が出始めたような印象を持ちます。今までは行政のコメントをそのまま掲載していたメディアも本当の姿を書かざるを得ない状況になると思います。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

Posted by: 井上一夫 | 2013.11.09 at 06:08

はじめまして。
千代田図書館と日比谷図書文化館を利用している者です。
とても興味深いご指摘です。公開書架に異版が並んでいるのは、法律書にとっては決定的ですね。書庫には旧版を置き、書架に新版を置くのは常識でしょう。千代田と日比谷は出自が違うためか(委託先が違う?)蔵書の統一性と安定性に欠けるきらいがあります。新版が出ても購入しないとか、それぞれ異なる版を排架していることがあります。一方、OPACを見ると、四番町図書館にもいいものがありますよ。バックアップ書庫が要りますね。でも、国会と都立に行けばいいと思っているのかもしれません。よく、古いものは中央区の京橋図書館に行け!という話がありましたが、今はどうなのでしょう。

Posted by: B | 2013.11.16 at 13:17

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