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2008.01.22

図書館と財産権の精神

 『ず・ぼん13』が届いた。話題の「有川浩インタビュー」ほかもりだくさん。
 ちなみに自分は「図書館戦争」シリーズのファン。一方で有川浩氏の困った側面をネット上で見たこともある。またまた一方で、図書館雑誌誌上の図書館戦争批判は難癖だと思っていた。
 それは別項にて、今回は措いておいて。

 ポット出版には、ときどき「おや」と思わせられていた。
 そもそも『ず・ぼん』なんて本を作ったり。『ず・ぼん』のバックナンバーをネット上で公開したり。
 『ず・ぼん』が出た頃は、公貸権論争もかまびすしく、「図書館のことを採り上げ、考えてみようとする出版者がいるんだ…」となんだかわくわくしたことを覚えている。

 ポットの日誌「図書館で働いて、ちょっと、と思った事」

 どきんとした。
 そうだよ。こういうことをこの間まで議論していたはずじゃなかったか。

んでんで、その後、その区でだしている「図書館だより」を見ました。
そこには、「読み終えた本を寄贈していただけませんか」という記事があり、
特に予約の多い本のタイトル/著者名/出版社、の表がついていました。

(中略)

僕自身、この事態をどう考えるのがいいか、今もちょっと整理しきれてません。
でも、図書館が無料で本を貸し出すのはいいし、副本(説明省略)も一定の限界を設けてあればいいと思うのですが、寄贈をよびかけるのはどうなんだろう?という感情になっているのです。

無料貸し出し、副本、はいいとしても、購入という形で著作権料を支払う、というのが図書館にもとめられていいのではないか?

 本の作り手の、こんな観点を無視してはいないだろうか?

 ポットの沢辺さんは敵にはまわしたくない。
 しかし実際、リクエストの多い本については、今回の記事のようなことは日常茶飯だろう。
 図書館の予算は限られているわけで、複本を買わなくて済むなら、ベストセラー以外の本にまわすことができることも自明。
 沢辺さんの違和感はこれで解消できないかな…と思っている。 

 しかし。
 そこから延長して、矢祭を安易にモデルケースとしてしまう考え方ってどうなのよ、と妄想してしまった。
 つまり、寄贈をメインとする図書館。出版界の側はどう捉えるのだろう?
 『ず・ぼん』は次、矢祭町に取材に行かないかしらん。

 公立図書館には、国立国会図書館の納本規定に込められた日本国憲法第二十九条第三項「財産権の相当補償」の考え方は、ない(のでいいのですよね)。
 ただ、民間納本の納本代償金制度については、国会の初代館長金森徳次郎は憲法学者で、一冊といえど財産権の存在を指摘したんじゃなかったか。…あれ、著作権じゃないよな、この話って。モノとしての本のことだな(…だから「寄贈もかまわない」って?)。

 図書館業界がそんなこと言ってる場合じゃない、ってのもわかる。
 わかるが、それってさ。図書館や、自治体、ひいては読み手の側の都合じゃないの?
 なんだか、安定的・普遍的なモデルであるとは、到底言い難い。

 矢祭町を成功と言うなら、自治意識のきちんとした自治体の決断、というだけで充分だ。そのこと自体はもちろん、尊重に値する。いろいろな図書館があっていい。そのひとつだ。そのひとつ、というだけだ。
 しかし、本の作り手との間の問題では「決定的に欠けた図書館である」ということは言えるんじゃないのか。これがボランティアが勝手にやってるんだったらわかる。自治体という名の「政府の元において作られた住民の共有資源であるところの公立図書館」であるというところに、問題がある。

 そう考えてしまう。
 自分がとらわれているような、「旧来の思考枠組」なら。

 学術・小出版がかつてあげていた「図書館で3000部買ってくれたら」という声。図書館の側からしたら無理な相談、そんな都合のいいことを言われてもね、ともわかってはいる。
 だけど、そんな作り手の声を考慮しない図書館-出版流通モデルってのは、どうなんだろう(「一回誰かが対価を払っているんだから問題なし」とする)。寄贈はもちろんありうるが、資料収集の「原則を寄贈とする」ならば、違和感がある。
 確かに収集手法が紋切り型ばかりじゃつまらないが、これまた考察に値するんじゃないか。誰か、寄贈型図書館モデルの展望を示してもらいたいな。

 いやー実際には問題じゃないですよ、という見解もあるでしょう。それはそれで示していただければ。この記事で提起した問題意識とは全然違いますが。
 それでも、上で重ねたロジックにも、妙なズレを感じてもいます。
 どなたか整理していただければ、幸い。

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