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2006.09.10

感想:『図書館戦争』『図書館内乱』

Toshokannairan ※以下は、作品全体の評価はしていないので、念のため。

○読む前。二つの印象。

・ライトノベル。行政戦隊図書レンジャー(著者自身茶化して言う)
→図書館をネタにしたってだけか?『図書館戦隊ビブリオン』みたいな(あれはあれでよくできているし楽しめたが)。
・目次が図書館の自由宣言。
ほかのブログでの「今さら」「誤読はまずかろ」批判には同意。知人が「泣けた」ってのは…???

○読んでから。

・体調悪くて横になりながら読んだからかもしれない。図書館の現場には最近疲れを感じているし。「…戦争」なんか、宣言の第四で終わりと思いこんでいたため第五章は前日譚くらいかと思っていて(第四章迄でひと区切りついているし)、続くクライマックスは怒濤の展開に感じられた。
 要するに、ええ。泣きましたよ。目頭がじーん。本読んで泣きそうになるの本当に久しぶり。一気に読ませられた。
 胸が締め付けられた箇所が、「…戦争」で三箇所、「…内乱」で一箇所。心情描写のテンポがよいので、続くライトタッチな流れに引き戻されなければ、涙がこぼれていた。
 昔、新人に「君さ、図書館にどうして就職したの?」とよく聞いていた。最近は諸々あってそんなことも忘れていたが…憶い出した。
 なんというか、「自由宣言」云々「船橋以後」云々というより、かの描写が自分の内奥にある感情を引きずり出して来るというか。
 ちょっと断言しちゃうけど、この感情はさ。「自覚的な図書館員」になら普遍性があるんじゃないのかなあ。図書館員だけじゃなく「本を読む人一般」に、「通底してしまう」描写として成功しているんじゃないかしら。

・その感情は「図書館に無批判でいること」とはまったく違う相で―現実の図書館に批判的な視線をもつ人であっても(自分もそのつもり)、「本を読む」ということ自体の、些細かもしれないが確かな喜びの描写に、心動かす人は多いでしょう。図書館に批判的である人はそもそも、「読むこと」と「図書館」に関心や期待があるんだから。

・もちろん、「通底してしまう」という怖さ。それに気がついていることは大事であって、それをまた描いたのが「…内乱」。「少年事件実名調書週刊誌問題」やら、まだ結審から一年経過していない「船橋市西図書館蔵書廃棄事件」までとりこんでんだから舌を巻く。
 但し、「…内乱」がこの架空世界の背景となっている組織の話と、脇役たちに描写に重きを割いている分、「…戦争」の方がストレートで燃える。「…内乱」は起承転結でいう「承」の部分なんだろうな。そういや、魅力的な「悪役」も登場。

・「…戦争」は「図書隊は正義の味方じゃない」「でも…」というところで充分だし。「…内乱」はそこから進んで「清濁併せ呑む」まで言い切っている。「泥被る覚悟ないんだったら正義の味方なんて辞めちゃえば?」

・その、「(現実にもオーバーラップして)通底する危険性」「「…戦争」における自由宣言の理念を実現すべく実働部隊として描かれている図書隊」「「…内乱」における原則派と行政派」の描写を、エンターテインメントにして描ききってるところは超評価。侮れない。
 「…内乱」じゃ、架空世界のくせして「戦前」の図書館界が出てくるわ、「悪の」中央図書館制度構想は出てくるわ…。

かげうらきょうのブログ:有川浩『図書館戦争』
 よくできたエンタメとしてまずは読もうや、という発想はまったく賛成だし、せっかく整理してくれているところは拝借するにせよ。
 でも、理論面では焦るべきじゃないでしょうか、学界は。

・しかし、なんで売れてるんだろう…。

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Comments

(・o・;)船橋西まで出んのかぁ… 立ち読みしてみるですよ。

Posted by: shomotsubugyo | 2006.09.10 at 22:36

 「焚書事件」の記述は、『図書館内乱』pp.152-155, 255-263です。
 もちろんアレンジが加えてある…というか、船橋西図書館事件とそれ以前の自由に関する事件とを考えられるよう、組み込んであるのがうまいなあと。
 小説世界の「正義の味方」の感性にノセられてもまずいですけど。じゃ、現実の図書館員はどうなのよ、と問われてるみたいでキビシイ。

 心底、奉行さんところに行って勉強しないと、と思います(かなり真面目に言ってます)。

Posted by: roe | 2006.09.10 at 23:29

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