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2006.09.16

西尾幹二先生、著作権法はご存知ですか (1)

※2006.9.17.公開。

 船橋市西図書館最高裁判決以来、「西尾幹二のインターネット日録」をときおり見せていただいている。
 口頭弁論で「GHQによる焚書」を格調高く述べておられたやに記憶するが、その折に当ブログでは、多くの本がそのリストに掲載されながらも焚書されずに各地の図書館で確認できることを記事にした。

 その後、西尾先生はその焚書を免れた古書の蒐集家と接点を持ち、その訪問についてお書きになっておられる。
 復刻ないし電子化を企図しておられるようだ(pdf化を口にしている)
 ようなのだが。

 以下は、西尾ブログの読者宛てに、書いておきたいと思っていたことである。

 図書館員としては、各地の図書館に残されている古書は、今になってこそ「焚書を免れた資料」という価値があるが、通常は「利用されなくなった資料」にしてはよくも廃棄されずに残っていたものだと感心する。
 改めて、現代の視点をもって照らし出し、世に出すためには、原本のままでは無理だ。紙は劣化するものであり、図書館であれば通常、マイクロ化したり、今では電子化して、媒体変換を行う。
 さもなければ、出版社が、復刻版を刊行する。
 ぜひ、歴史的な資料を世に出していただきたいのだが…。

 最近、自分は国立国会図書館の「近代デジタルライブラリー」について少々調べてみた。そのことを記す。
 本記事執筆時点で、国会図書館所蔵の明治期刊行図書の75%を直接この電子図書館で見ることができる。使いこなせれば相当に便利なシロモノである。そして現在は明治期に注力しているが、順次時代を下っていく計画のようなのだ。以上は近代デジタルライブラリーのパンフレット(pdf)に書いてあるので直接ご覧を。
 ところで、調べるにあたり、国会図書館発の刊行物の記事にあたってみた。「著作権処理が大変だった」という記事ばかり…。ツマラナイ。
 しかし最近の図書館学を学んでいる者にとってはまあ、当たり前のことだろう。「電子図書館」は当初テクノロジーだけで語られていて、図書館情報学にとっては夢であったり脅威であったりしたが、電子図書館の研究者たちはその研究成果を実用化するに当たって、社会制度、著作権をどう解決していくかについては考えていなかった。
 結果、電子図書館の実現に当たっては著作権制度が想像以上の壁となった―らしい。

 著作権制度からすれば簡単なことである。図書館関係者なら、これまた基本だ。
 著作権は、著作者の死後50年間存続する。50年を経過しない限り、第三者が自由に利用することはできない。利用には著作権者の許諾をとる必要がある。
 著作権者は著作者とは限らず、通例著作者の死後は財産として相続されて、遺族が権利の保持者となっていることが多い。
 ところが、この「著作権者を探して許諾を得ること」が相当に大変なのである。具体的に考えてみてほしい。著者の没年を調べ、50年が経過したかを確認する。没後50年未満であれば、遺族の連絡先をつきとめ、許諾を得ようとするのだが―当人が著作権者であることも自覚がないことは多い。
 これらの努力を当然の如くになした上で、それを前提にどうしようもない段階になって初めて解決する制度が文化庁長官の裁定制度である。しかし、通常人の感覚からすると(いや筆者だけかもしれないが)相当にバーが高い。ここまでのことを考えると。
 そう簡単に、電子化なんてできないのである。殊に、無名の著作者たちの場合は。

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