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2005.10.23

JSLIS研究大会2005・第二日め

田村俊作ほか「公共図書館利用者の知識共有メカニズム」

 共同研究者が7人もいるので、田村先生ご自身が発表されるとは思わなかった(驚)。筆頭だったから当然と言っちゃそうかもしれないけどさ。二日めに狙いをつけていた発表は別だったので、この発表を聴けたのは拾いモノ。
 司書資格取得時に熟読した教科書のレファレンス部分が、あとで田村先生のご執筆だったことがわかったこともあって(整理がとてもよかったのです)、田村俊作先生の「レファレンス論」にはずっと注目している。先生の過去の論文はけっこう読ませていただいている。

 既往研究手法について、二つ挙げる。ひとつは、図書館利用者調査。ひとつは、個人の情報探索行動に焦点を当てた研究。
 ふたつの利点を指摘しつつ限界を示して、「知識共有」という観点を導入し、新たな局面を拓こうとしておられた。

 電子図書館が話題になった頃、レファレンスといえば電子レファレンスばかり論文が立っていて。レファレンスそのものの理論(認知モデルとか)やアナログな実践やサービスそのものの意義については、文献渉猟しても古いものしかひっかかってこなかったんですよね。
 田村先生が展開される今後が楽しみ。

山梨あや「戦前期公共図書館における教育の模索―今澤慈海の図書館論を中心に」

 図書館の歴史は自分は弱いし、「今澤慈海」という人名にひかれて勉強。
 文献から中田邦造と比較していた。二人とも背景は違いながら、図書館を独立した教育機関として定着させていこうとしていたことはわかったけど…。ふーん…という感じ。
 質疑は簡潔ながら数多く出され、山梨さんはてきぱきと回答。

大場博幸「公共政策としての公立図書館:論点の整理」

 今回参加の主目的。質疑冒頭で糸賀先生に苦言を呈されていた。要綱もパワーポイントも字が小さすぎてよく読めない。要綱は事前に読んでいたのだけれど、プレゼンテーションの方がずっとわかりやすかったのでもったいなかった。詰め込みすぎて、とばしまくっちゃったから。pptファイル、ほしい…。
 「図書館サービスを公的に供給することそれ自体の正当性」にまっ正面から取り組んだ発表。導入をちゃんとしながらも例によって公共経済学を用いているが、標題に示すとおり従来の先行研究に比べると、かなりタイトに、公共経済学の理論と公共政策を俯瞰した視点に沿っている、という印象を受けた。
 構成としては、公共政策論を規範的に扱う上で公共経済学を導入する理由付けとレビュー、余論としての「公共性」概念、本論としての「効率」と「公正」、そして「結論」。
 以下、要綱から抜き書きしておく。


 「ここでは敢えて規範的に考察をすすめる。ここでいう「規範」とは、財を公的供給するか民間供給するかを境界づけている公共経済学の理論を指す。…影響のある理論の上で、図書館の公的供給が否定されるかあるいは位置づけが曖昧なままならば、社会の広範な支持が獲得できるとは考えられないだろう。」
 「特に日本の議論における傾向だが、「市場の失敗」分析は盛んだが、もう一つの規範である社会的公正さについてはあまり突っ込んだ分析がされていない。」
 「結論から先に述べれば、公的供給の規範として、公共性は十分な概念とはいえない。」
 「公立図書館に「公共性」認めることができても、なお税金で運営された方が良いのか、それとも民間に任せた方が良いのかという問いは避けられない。」
 「定義に従えば、やはり公立図書館は公共財ではない。だが、直後に「準公共財」である、という留保もしばしば加えられている。しかし、準公共財というカテゴリには、民間供給されるものも同時に含まれる。…つまり、公立図書館が準公共財であることは公的供給の正当性とは関係がない。」


 この辺までが「効率」までの部分。肝心の検討部分をすっとばして…結論。


 以上の考察を踏まえれば、図書館が公的に運営される正当性の根拠は、読書やサービスによってもたらされるはずの正の外部性に多くを負っているといえる。純粋な再分配政策としての正当性はかなり怪しい。むりろ、機会均等という意味では再分配の面を有しながらも、外部効果を期待する競争促進策とした方が理解しやすい。また、一見、再分配的に見える自由な情報アクセスという理念も、外部性に正当性を求めざるをえないだろう。
 ただし、外部効果の測定には不確実性が残る。今のところ、公立図書館に正の外部性があるということは信念の領域だろう。


 つまり、公共経済学そのものからは公立図書館は正当化できない「読書」の社会的評価に、正の外部性があると考えられることによってようやく正当化ができると信じられている、というのが論旨。

 所用あって、このあとは退出。喫茶コーナーで3人の方と話ができたのも収穫だった。

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