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2005.08.10

判決の著作者って?―船橋裁判口頭弁論と判決の保存年限

 えーと、表題前半部の内容が書きたいのではありません。後半部です。

 口頭弁論で、確か井沢元彦氏が、次のようなことを仰ってました。この発言は内容から言って弁護士さんということはないと思いますが、西尾幹二さんと勘違いしていたらごめんなさい。多少、バカにした記事を書くからです。

 「裁判官の方だって、自分が書いた判決が勝手に捨てられたら悔しい思いをするでしょう?」

 もちろん、保存年限を無視して捨てられたら問題でしょうね。その意味では、今回の船橋市西図書館での問題行為と似たように思われるかもしれません。
 でも、この発言、おかしいんです。表現の自由の正当性を訴えるための内容になってない。

 著作権法上の話で行けば。
 通常、職務上の著作ってのは、著作権はその組織に属するようになってるはずだし。
 判決ってのは著作権ないし(詳しい条文は著作権法の関係サイトに行ってください)。

 それとですね。自分がここで特に採り上げたいのはですね、裁判所ってのは別に裁判官の表現を保障する機関ではない。それどころか自分たちの記録を社会的財産として管理する態勢も整っていない、っていうエピソードなんですね。
 今回の発言がひっかかっていて、結果的に入手するところまでいった本があります。

 林屋礼二ほか編『図説 判決原本の遺産』信山社,1998.

 前置き。
 裁判所や知人の弁護士に聞いたところ、現在「判決原本」は保存年限は50年。各裁判所で保存されます

(※2006.12.16.追記。
 現在の判決原本の保存年限の正確なところは、裁判所規則等を調べてください。
 ここに書かれたことを鵜呑みにしないことをお勧めします。
 文脈は間違ってはいないのでそのままにしておきますが…。)

 しかし、判決そのものだけを見ても何にもわからないので、詳しいことを調べたい場合は第一審へ。なぜかというと、数百頁にわたる「訴訟記録」は結審した段階で、第一審に戻されるからです。ところが、判決原本に比較して、保存年限は相当短いものです。

 この、判決原本の50年という保存年限は、平成2年に最高裁が出してきた方針です(たぶん、きちんとした法令で定まってるんだと思いますが)。それまでは永久保存。平成6年から実施すると言ってきたんだそうです。
 上に掲げた本は、その方針を最高裁が出してきたときに、「明治初年から昭和一八年までの判決原本がすべて焼却されてしまうことになる」と各国立大学法学部の先生方が奔走した記録です。
 「これらの判決は、明治・大正・昭和という日本の近代化の過程の法・裁判制度、そして、日本社会の変遷の状況を物語る貴重な資料である」。

 井沢氏は、自らの著作が国立国会図書館に永久保存されることをご存知なんでしょうか?それと、公文書館が何を保存しているか、ご存知なんでしょうか?
 その上で、立法・行政の記録保管制度と比較して、日本の司法制度がいかに記録を大切にしていないか、ご存知の上で、あんな発言をしたんでしょうか?

 つくづく、表現とか、表現の自由とか、それらが保障されるってことがどういうことかよくわかっていない方の発言だなあと思ってしまいます。少し調べればわかることですよ。自分でも少しの間に調べたんだから。隣に座っている弁護士さんにでも聞いたらよかったのに。物書きって言っても、レベルが知れますね。

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