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2005.08.05

GHQ没収指定図書総目録関連文献紹介(4)―『略奪した文化』を読む : 3

※8/7に書いています。

 松本剛『略奪した文化 戦争と図書』岩波書店,1993.

 ところで、「第一章 三」の上の文に続く「四 中国図書の所在調査 (1)図書問題に関する占領政策」(p.13-15)は、非常にわかりやすくGHQの図書・図書館問題についての措置をまとめている。ここはそのまま引用しよう。

 アメリカ軍を主とする連合国軍総司令部は、日本を占領すると早速、図書や図書館問題について、矢継ぎ早の措置をとったが、重要なのは次の四つである。
 一、占領軍は占領政策を具体化し、実行するのに必要な文献を収集した。これには日本の戦争責任を解明するのに必要な軍部、政界、財界に関する文献も含まれる。これらの文献の多くはのちにアメリカに持ち去られた。これは連合国軍総司令部の民間諜報局(CIS)が担当したが、諜報局はその後たびたび組織が変更された。
 二、出版物の検閲を行った。これも民間諜報局が担当したが、のちに参謀第二部が担当した。検閲のために膨大な出版物が提出させられ、これものちにアメリカに持ち去られ大規模な文庫となっていくことは、第五章で述べる通りである。
 三、日本政府が行っていた図書の閲覧制限を解除し、また、図書館の整備を勧告した。これは民間情報教育局(CIE)が担当した。この場面のみを見ると、アメリカ民主主義が日本の社会教育を前進させる面でいかに大きな貢献したかが強調されることになる。しかし、この場面も支配を基調とする全体としての占領政策の一構成要素である。
 四、日本が中国やアジア諸国で略奪し、日本に持ち帰っていた図書を調査、収集し、各国に返還させた。これは民間財産管理局(CPC)が担当した。
 本書にとって関心のあるのは、このうちで一、二、四である。
 さて、この四つの占領軍の政策を並べてみると、重要なことに気がつく。
 第一に占領軍は中国などへは略奪図書を返還させながら、他方では日本の文献を大量にアメリカに持ち帰っている。
 第二に、戦時中の日本の図書の閲覧禁止を解除して、読書の自由を推進しながら、他方では、出版物の検閲をやって、言論の自由、読書の自由を妨害している。
 このように図書や出版物について相反する政策がとられているところに、アメリカ占領軍のファシズムからの解放軍としての性質と戦勝国たる支配者としての性質の二面性、または民主的性質と反共的性質という二面性が現れている。この二面性のもつ内的連関等の問題は占領政策全般の性質を取り扱うことになり、本書のテーマからずれるので、ここではただ指摘するだけにして、話をもとへ戻すことにしよう。

 一、二、三、四で挙げられているうち、図書館業界として有名なのは、二がプランゲ文庫のマイクロ化事業、三がGHQ/SCAP文書による図書館法成立史関連の研究で、だいたい三が図書館史の触りに出てくるところだろうか。四については、いわゆる"満鉄図書館"なんかが関連する話題なのかな?昨今また新刊が出てますね。よく知らないもんで…。
 自分が手許にあって積ん読状態だったこの本、読む機会を与えてもらって正直感謝している。誰に感謝すればいいのかわからないけれども。第一にはこの本をくださった方だろうなあ。
 何を感謝しているって、上記のように四つの側面をまとめてもらうと、やはり大きな占領政策、文化政策の一環だったのか、ということが俯瞰できてありがたかった。ご存知の方はご存知なんでしょうが、ワタシってバカね。
 要するにですね、「読む自由」だの「図書館の自由」だの言っても、「ときの政府」(government)次第なんですよ。やっぱりそうか、と得心がいきました。自由に二種類あるという話はまた別の機会があれば、いたしますが。著作権のところでも書きましたが、図書館だって人工的な自由以外の何者でもないんです。
 憲法だって図書館だってそうですが、当時の立法者意思の歴史研究をきちっとやった(知らしめた)上で、改めて再定位、解釈するという姿勢が大事ですね。

 脱線しますが、国会図書館は「図書館の誕生」っていうパスファインダー作るべきじゃないかなあ。図書館史を紐解こうとしても学界で知ってる人は知ってるけれども、図書館史をやる上での「常識」は門外漢にはわけわかりません、だもの。
 国会図書館はHPに憲法学者の高見勝利先生を招いて「日本国憲法の誕生」なんて一大展示を作ったけれど、史料に忠実であることは自分も評価しつつ、「歴史」を書くってことは「物語を作る」「解釈をする」ってことなんだからさ。あれは高見先生の著作、作品ですよ。図書館の仕事じゃない。税金を使ったことを考えてデジタルデバイドを考慮、全国民に知らしめるためには、出版社に売り込むか、製本orDVD化して全国の公立図書館に備え付けるべきじゃないですかね。
 そうじゃなくって、あなたが調べようとしている主題はそもそもこんな性格で、最低限当たるべき資料はこれ、調べるならこういう資料、当たるべきところはこんなところを、というような、いってみれば標準的なfinding the path to ...がないから、近代図書館を知る上でわけがわからないことになっていて、困っちゃってるんじゃないだろうか。

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