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2005.08.04

GHQ没収指定図書総目録関連文献紹介(3)―『略奪した文化』を読む : 2

※8/7に書いています。

 松本剛『略奪した文化 戦争と図書』岩波書店,1993.

 「第一章 三 略奪以外の本も占領軍が収集」 p.9-13.

 第一章では、著者が所属する大学から中国の図書館に本を寄贈するというプロローグ(一)から、二で同じ大学の図書館の人に話をしていたところ、文部省発の古い通知文書が出てきた―それがGHQの「中国からの略奪図書の調査命令」であったというところから、著者の関心が中国(の大学、各種機関)から本を略奪した事情に広がっていた旨が書かれている。略奪者たちは兵士だったのか、大学の教師だったのか、図書館員たちだったのか。
 そこから翻って、三では、敗戦後の日本における占領軍の動向を描く。以下、上掲部分の引用。この引用部で、「GHQ没収指定図書総目録」の図書館での取り扱いがどのような背景であったのか略述されていると言えると思う。詳しくは第六章。

 アメリカ軍は日本を占領すると、ただちに日本の支配階級の状況や地理、経済等について調査した。…(中略)…進駐二〇日後に[帝国]図書館に来たことになる。
 ところで、マッカーサー司令部は略奪図書の回収をやっただけではなく、いわゆる宣伝用刊行物といって、戦時中に国民の戦意を高揚するのに役立ったと見られる本も提出させた。…(中略)…宣伝図書の回収についての覚書は、一九四六年三月一七日に最初に出され、その後繰り返し出された。…(中略)…この没収命令は当初は図書館には適用されないことになっていたが、命令の変化や混乱もあり、図書館でも大きな被害を受けた。
 …
 占領軍は略奪図書や宣伝図書のほか、戦時経済について資料的に価値のある文献も提出させた。…
 …[京都帝国大学図書館、大阪商科大学、外務省、文部省への提出命令についての記述]…
 ここで重要なのは、これらの図書の提出命令が略奪図書の探索命令や宣伝図書の没収命令よりも早く出されているということである。すなわち、アメリカ軍は占領後まず真っ先に、アメリカの必要とする本の収集に着手しているのである。
 …
 これは、本のことではないが、「占領直後の、米軍の物資調達ぶりは相当に荒らかった」といわれる。…(中略)…金魚やあひるを調達してこい、という命令もあった。
 アメリカ軍の命令は絶対であった。
 このような社会的な雰囲気のなかで、アメリカ軍による図書の提出命令が出されたのである。それは、当時の日本人の受け止め方としては日本軍が中国で出した図書の接収命令と同一の強制力を持つものであったと思われる。
 アメリカ軍による日本図書の押収については、あとで詳しく書くつもりである。ただ、アメリカ軍が日本で図書の接収をしていたことと関係づけて考えてみると、連合国軍総司令部が中国図書の返還を日本にせまったのは、決して中国の学問や科学を尊重し、その地の民族的な文化遺産を守ろうとしたからだということだけでは、説明がつかないように思われる。戦争においては戦勝国が敗戦国の文化を奪うというのが基本であり、中国図書の回収は、いったんは略奪された図書を今度は取り返そうということであり、戦争を契機とする文化財の移動の一つの形態にすぎないのである。もちろん中国図書の返還要求は中国政府の強い要求によるものであったことは、当然である。

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