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2005.08.03

GHQ没収指定図書総目録関連文献紹介(2)―『略奪した文化』を読む : 1

※8/7に書いています。

 松本剛『略奪した文化 戦争と図書』岩波書店,1993.

 8/7付記事に書いたように手こずっているので、6月段階で気づいていた「第六章 占領下の焚書」の記述を中心に先行して紹介するようにしたい。
 わが尊敬する読書日記さんのような気の利いた文献紹介はできないのでお許しを(もちろん、西尾先生のようなまとめ方もできませんでごめんなさい)。当然のことながら、ここに書く自分の理解が誤っていることは大いにありうるので、原本にぜひ当たっていただくことを強くお勧めする。

 本書を紹介する目的は、最高裁での上告人西尾幹二氏の口頭弁論において、自らの利益主張をする際に『GHQ指定没収図書総目録』を提示したことがいかにズレた歴史感覚から来ているか、を明らかにするためである。読み込んでいくと、二重にミスがあることがわかる(が、判決は気づかなかったようだ。わかってて無視したか。判決そのものに対する印象批評はまた別途。まあ要するに、あんな杜撰な法的構成に一致した裁判官連中に怒ってます)。
 一つは、「図書館」における焚書問題として採り上げる素材として不適切であったこと。自分は個人的にはこれを特に重視している。一つは、「表現の自由」という規範問題として採り上げる素材としても、当時の一般的背景からして不適切であるということ(占領下であるということの評価)。
 後者を更に拡張して言うならば、一般的に戦勝国Aが何をするか。つまり戦勝国A=それがたまたま日本だったときの占領下での所業(焚書行為)について、現在の歴史を生きる西尾氏の念頭にあるのか、という点に疑問をもっている。占領軍がたまたまGHQだったことだけを強調して言うのであれば、それはダブルスタンダード(二枚舌)だ。学者の主張として一貫性、一般性がない。単なる二流の政治思想家の弁である。
 自分の「表現の自由」が踏みにじられてくやしい、と言いたいのだったら、偉そうにラス・カサスやGHQを出す必要があったのかどうか。「国民の記憶」の問題は非常に勉強になったが、そんなことは今回関係あるんですかね、というのが自分の感想だ。

 さて、以下本書の目次を掲げるが、日本の学界・図書館界が占領地や満州で何をしてきたかについては、ほかの文献でも記述が見つけられるように聞いている。本書に興味をひかれたのは、目次の中でも第六章、日本における「占領下の焚書」の記述にほかならない。
 が、自分が勉強が足りないようであればぜひご指摘願いたい。国内のことである。本書にも古い図書館雑誌からの注記が多く見られ、当時のことを実際に体験しておられたりそうした方々から話を聞いておられる図書館員、図書館文化史の研究者の方々には常識であることが想定されるからだ。特に、戦前以来の図書館本の収集にお詳しい書物蔵の書物奉行さん、ツッコミよろしく(笑)。

 第一章 略奪中国図書の探索命令
 第二章 図書略奪の「根拠」と正当化 ―戦争法規と「文化的戦争」論―
 第三章 中国・アジア図書の略奪
 第四章 大学・図書館の破壊と奥地への移動
 第五章 日本の図書被害
 第六章 占領下の焚書
 第七章 略奪図書返還に向けて

 カバー見返しから

 戦争に略奪はつきものである。かつて中国、アジアを侵略した日本も、人命を奪い、土地を奪い、資源を奪った。日本が奪ったもうひとつのもの、それは本だ。知識人たちは動員され、あるいは欣喜して膨大な図書を奪い、日本に持ち帰った。中国の人々は、図書館を奥地へと移動させ、命を懸けてこれを守ろうとした。未だ決着のつかない文化の略奪史を多くの資料から明らかにする。

 「あとがき」から

 本書は、中国への侵略戦争を行っていた間に日本が大量の図書を国立図書館、大学並びに研究所に持ち帰っていたこと、戦後、アメリカ軍が日本から公文書や図書をアメリカに持ち去っていたこと、占領下の中国と日本で図書が大量にいわゆる焚書の厄にあっていたことの三点を、事実に即して述べたものです。日本は勝ち戦のときには図書の略奪者であり、敗戦国になると、こんどは被略奪者の立場におかれました。
 本書では述べていませんが、戦勝国が図書や文書を略奪したことはヨーロッパでも同じでした。ドイツは勝っているときには周辺の国から図書や美術品を奪いましたが、敗戦後はアメリカやソ連に略奪されました。
 いずれにしても、戦勝国は敗戦国の図書や公文書、美術品を奪ったのです。
 戦勝国はつねに「正義の戦争」を標榜して自国民を戦争に動員しましたが、その「正義」の一つの実態が他国文化の破壊と略奪だったのです。…(後略)

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