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2005.08.17

「GHQ没収指定図書総目録」復刻運動の末路(1)

 この記事、皮肉まじりの気分で書かないではいられない。もちろん自分の勘違いもあるかもしれない、その折はご指摘いただき、謝罪もしたいという謙虚な気持ちもあるが…。

 西尾幹二「知られざるGHQの「焚書」指令と現代の「焚書」」『正論』2005年9月号 p.48-58.

 先日の記事にも紹介した西尾論文。後半は、西尾氏がかの『GHQ没収指定図書総目録』収録図書を収集し、電子的に復刻したい、という話題だった。
 「西尾幹二のインターネット日録」管理人の「年上の長谷川」氏からいただいたコメントの中でもこの活動を紹介され、意見を求められている。

>  さて、それはともかくとして、GHQによる「焚書」事件に対して、
> 現在それらの失われた文献を収集することから西尾先生は始めよう
> となさっています。
>  図書館に対しては除外されたその「命令」にもかかわらず、4000
> 冊の書物が一般家庭からも図書館からも、ほとんど失われているの
> が現状です。
>  これらの本をどうやったら、もう一度一般の我々が目にすること
> ができるでしょうか?
>  ・・・・現在古本屋でそれらを高値で購入することしか手段はあ
> りません。
>  お考えをお聞かせ願えませんか?

 コメントを読んだときは、自分も図書館員、失われた図書の収集とはすばらしい。西尾氏に批判的なサイトに対してこんな前向きな話をふってくるとは懐が深い、という印象を受けた。
 だからこそ、同様に喪われた文化を追い続けた文献学・歴史学者福島鋳郎氏のコメントを、異論として、紹介したのでもある。
 また古書収集には、自分は素人ながらシャーロック・ホームズ関係の縁で、一種独特の世界があることも知ってはいる。だから、図書館のことしか考えていない「図書といえば新刊書と図書館にある資料のことしか考えられない図書館員」に比べれば、図書館の外に広がる広大なる文献世界、その中から一定の視点をもって収集を根気よく続けていくことの労力や業のようなものを、知らないわけではない。私事ながら、古書収集癖のある方に対しては、その主題が何であれ、自分はその情熱に敬意を表さないではいられない。

 そしてその上で西尾氏には、批判も覚えないではいられなかった。
 「GHQ没収指定図書だけに情熱を燃やすというのは、大陸で喪った図書も参照してこそ歴史がわかるというもの。(理念的ではあっても)普遍的な文献世界に正対する図書館員としては、西尾氏の姿勢は歴史に対して"偏向している"と言わざるをえまい」。これが、「年上の長谷川」さまへの自分の回答である。
 それともう一つ。古書収集そのものは、どこまでいっても個人的なもの、"趣味"である。「西尾先生のそれは学問といえるのかもしれない」が、学問も趣味も究極的には勝手にやってること。偉くもなんともない。
 ほかの古書収集家と比べてみればわかることだが、図書館に保存されていない資料や手許にどうしても置いておきたい資料を、自分の必要で集めてくるのは当たり前である。『GHQ没収指定図書総目録』収録の図書だけを偉そうに語るほどのこともない。情熱に敬意は覚えるが、優劣はない。

 少々脱線するが、図書館、特に国会図書館のような調査研究図書館をよく誤解していると思うのは、「図書館(群)はあらゆる図書を収蔵している、収蔵すべきである、把握可能である」という勘違いである。図書館の蔵書構成方針が自分の研究対象から外れている場合、刊行されているにもかかわらず図書館に収蔵されていないことはよくある話であり、そうなれば自分で集めてくるのは当然のことだ。
 「図書館本」ですら、そう。書物蔵さんのブログをよく読んでね。
 本口頭弁論及び判決においても、個人蔵と図書館の本との役割の違いを勘違いしているのではないかという節もある。

 しかし、前向きに話をもってきてくださるのだな、という印象は今でも変わっていない。変わっていないのだが…。

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Comments

質問に対する回答が西尾幹二批判になっていて苦笑しました。

Posted by: ウラシマ | 2011.07.27 at 07:12

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