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2005.06.27

ある図書館の使い方(6)―まわりくどいけれども主旨は

 …すみません。(5)でいただいたコメントで、元々言いたかったことを言っていないと気づきました。だから論理の飛躍がある。

 本シリーズの出発点、ターゲットはこちら。

 実際に自分は、一定の合理性やささやかな理念にもとづいて図書館利用の方法を選択している。この自分のような利用方法、「彼ら」は理論的に説明できるんだろうか?
 利用方法の選択肢、それは「全冊を含む複写」と「繰り返しての貸出」。自分の選択は後者だ。

 「彼ら」のひとつは、昨今権利主張かまびすしい著作者、出版・流通業界。
 いまひとつは、図書館学における「貸出」を経済学的に分析してみようとする学派。
 彼らは方法の点で共通している。同じことを言ってしまうようで恐縮だが、「貸出」と「購入」を経済学的に同じ分析の俎上に載せるのである。
 但し、図書館情報学における経済学的分析の目的は、逆に出版業界に対抗・説得するための立論であって、「貸出」を経済学的に説明しようとしても限界があることは気がついているようだし、その上で有用性を探っている。それは認めないわけにいかない。
 しかしそれでも、図書館学においても貸出点数は統計指標になってしまっているし、そのことが何を意味するのかは自覚的であった方がよい。そうでないと設置母体(自治体)に利用が多いことを主張する(…)ために作られた統計が、出版界に逆に利用されたりするからだ。また、図書館自身が何のための指標かわからなくなるようなバカバカしいことになってしまってもいる。
 そういうわけで、お二方を手荒にもひっくるめさせてもらって、問うて(みるようなものを書いて)みたいと思った次第。自分のような図書館の使い方って、ヘビーユーザならやってると思うし、それが想定外だとするとそりゃおかしいんじゃねーの?という単純な理由。
 自分はここでは、図書館員でありながら、図書館の利用者、市民の視点でいきたいのである。

 「全冊を含む複写」と「繰り返しての貸出」。
 自分の選択肢、「貸出」の方を語ってみる。

 出版業界の極端な論者からすると、一冊借りられるとその分その本一冊を買ってもらう機会が失われたということになるらしい。
 ストレートに問おう。自分のように、読み切れなくて、というか積ん読状態になって未読のまま、借り直す。それが繰り返される、とすれば、逸失利益はどれだけのものとなるのだろうか?

 極端な論者ではなくて、ていねいな論者にシフトしてみる。公貸権のようなものだ。貸出一回につき、これだけの金銭的な著作者支援を、という議論も、以前論じた「経済的」制度設計のレベルの話。
 やはり問うてみよう。未読のまま、本を再度借りるというときに、この「貸出」と経済的評価の関係はどのような観点から行われるのか?以前「法と経済学」の議論を見たときにも触れた「経済的・政策的な制度設計」以上のなにものであろうか。

 きちんとした議論もある。本シリーズで挙げたように、「貸出」は「読む機会の確保」であって、「購入」と類似点がある。違いは、「購入」によってもたらされる「所有」と対比される。「貸出」は、共有物(他人の所有物)を一時的に占有してしまうということ、その占有には自分の所有物ではない故の制約がある。
 ただこの議論も、実際的ではあるのだけれども、「貸出」「購入」概念の間の関連がよくわからない。例えば、自分が紹介したような方法、「予約制度があるからといって半永久的に占有していること」を「よくない」とする根拠は、即座には出てこないように思われる。

 単純に言えば、「本を借りること」って、そんなに悪いことなんだろうか。自分でパッケージを購入してしまうことのメリットって、充分すぎるほどあるような気がする。
 入手できない本がほしい―所有できたら、自分の好きなようにできる。これは当たり前。だけど、極論を言ってしまうと、貸与権なんてのは、交通法規とどこが違うんだ?反則金を徴収される論拠が「誰にでも納得できる」ものではない気がする。違和感の在り処は…「ルールを決めなくちゃならないから決めました」、そんな感じがするところにある。

 そんなことを考えていると、経済学的、疑似経済学的な議論はなんだかあやしい。腑に落ちない。
 これが、このシリーズを書き出した発端である。主旨としては以上。

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