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2005.06.19

ある図書館の使い方(4)―論難に対する言い分・三、特に複写につき

 第三点めとして、例示として大学図書館の利用に顕著に見られる特徴を指摘しておきたい。図書館一般の利用形態としての「複写」と「著作権」の問題に関わる。

 大学図書館の貸出制度について利用の点から見てみよう。
 返却期限は公立図書館よりも少々長いことが多いが、利用する資料の性質、学術性・専門性を考慮すると、上記の二点め、読み切り、利用しきるのに返却するまでには充分な長さとは言えまい。まして、貸出冊数の上限は公立図書館の倍以上であることもある。

 翻って、大学図書館の資料はどのような性格のものであるか。
 利用目的は「学術研究」が主であり、そのため、購入して入手することは既に不可能な資料が多い。
 長期的に貸出を繰り返している資料があるとすれば、前回述べた自分のように「必要性を感じられている資料である」可能性が高い。

 このような性格の資料であるとすれば、大学図書館の貸出というサービスは、何のためにあるか。どのような形態になるのか。
 資料の性格に比して返却期限の相対的な短かさから考えられるのは。
 「繰り返し貸出をする」か、「複写のための貸出」である。

 返却期限の問題は、大学に限らず、図書館関係者の共通の了解となっているだろうか?
 個人的に入手できず期限内に利用しきれない資料は、繰り返し借りるか、複写するしかない。
 当たり前のことである。
 しかし、返却期限の長さについては一律に決められ、それは比較的短い。最近は特に短いと感じられる。
 社会人になっての読書を考えればすぐにわかるが、短いのである。週に一度行くしかできないのに、2週間では。

 いつ読むか。
 「痛勤電車」では文庫や新書ならまだしも、単行本を読むことは、困難である。じっくり読み込むどころか、立って片手でつり革にぶら下がりながら片手で単行本を保持して、あの混雑の中で読むことは相当な「力」が要る。いや、そのような根性をもたれているのであろう、実践者を見かけてはいるが。
 単行本などはとりわけそうだろうと思われるが、通勤途上でなければ自宅にいる間、出勤前か退勤後しかない。
 それで利用しきれるだろうか?前回、「もちろん、貸出最大上限冊数は、その冊数を読めと言っているのではないことはわかっている。そういう話ではなくて」と書いたが、実際的な、"こういう"話だ。
 利用しきれない場合、どうするか。複写の場合を考えてみよう。

 図書館における複写の基本から。
 図書館における複写は、著作権法の例外として条項が特に与えられ、「著作物」の「部分」しか複写ができない。
 全冊複写は例外から離れて、著作権者の許諾が要る。市場で入手できないことは必ずしも理由にはならない。

 しかし、実質上、貸出が可能な普通の図書館の場合、利用者は抜け道をもっている。
 著作権法の例外規定となっている「個人の私的複製」の条項だ。図書館の構内を離れて利用者がコンビニ等で複写する分には「私的複製」の範疇に入ってしまう。私的複製であれば、著作権者の許諾は不要である(事実上というか社会常識上は一般規定だろう)。
 横浜市立図書館がコピー機を構内に設置して「私的複製」と位置づけると「強弁した」ことが出版界に叩かれたことがあったが、くだらない議論だ。名目としての法律上はもちろん問題なのだが、実質上、利用者は貸出をしたあとに全冊複写を図書館の構外で野放図にできるのだから。空文化も甚だしい。横浜の例では貸出できない資料の複写がどうなるかを問題にすべきだが、貸出できる資料については、構内での複写は利便性の向上以外の何でもない。

 利用しきれなくても、返却期限は淡々とある。となれば、入手できない図書館資料は複写される運命にあるとしか言いようがない。殊に今回述べた大学図書館は複写資料センターのようなものだ。
 自分が同じ本を繰り返し借りる理由はこの辺にある。少々自分勝手な言い分なのだが。
 まず、「利用」と「読む」ことは別である。そして、「借りる」ことと「買う」ことは似たところがあると言った。では、「コピーする」ことは「買う」ことの代理となるか。自分は、必ずしもならないと思う。本が、装丁された現物として「そこにある」ということは、「読む機会の確保」だとも言った。本の「複写物を読む」ことは、「本を読む」代わりだ。代わりなのだが、その本のどこが自分にとって大事なところとして判断する(読む)かは、全冊複写をしておかない限り、確保されない。
 では、全冊複写をするか。
 全冊複写をすることを許容するかどうかが、「繰り返しの貸出」という選択肢を選ぶかどうかの判断の差となるだろう。少なくとも自分は、そこで判断をしているようだ。

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Comments

 御説感心しながら読ませていただきました。なるほどこういうやりかた、考え方もあるかと。
もっともだと思われることも多く、大変参考になりました。
 趣旨とは違うと思われるかもしれませんが私見を述べさせて下さい。
 今公共図書館で委託で働いておりますが、勤務先でも延長は1度までになっております。他人名義の再貸出は家族間ですとお断りしております。とりあえず一日おいてからなら貸し出せるという抜け道つきですけど。
 筆者はご理解の上で借りておいでのようですが、実際にそのような手続きを踏むまでもなく持ったまま雲がくれしてしまう人も多いわけです。督促を電話でかけるとそのうち着信拒否。手紙で出しても梨のつぶて。かつてあまりに悪質な人の自宅に取りに伺うと居留守を使われ何年もそのまま。そういう人が減らないためうちの自治体では繰り返しの期限を決めたそうです。 なにせ大学と違い、利用者の居場所の特定は無理なことも多いですよね。引っ越されたりしてそのままって方がいてももうわかりません。
 筆者のように利用されている方はリピーターとして大歓迎といったところです。が、上記のような不心得モノがそれを妨げる!だから期限を定めて定期的にチェックをする必要があるのではないでしょうか?

Posted by: | 2005.06.21 at 22:57

 こんにちは。私は問題利用者との境界上にいるみたいです。督促もたまに受けます。仕事増やしてごめんなさい。

 ただ本記事の主旨としては、(5)でも整理に努めましたが、図書館が社会的共有の制度である以上、一定の制約が出てくるのは当然で、それは様々な形態があろうという想定、前提で論を進めています。それはもちろん従いましょう、と。
 実際、違う運用の図書館を知っています。そこは「返却-(新規の)貸出」なんてことはしません。その代わり延長を3回まで。回数限度が切れたら一度書架に戻さなければなりません。その上、期限をオーバーしたらその日数はペナルティで借りられなくなるとか。
 ですから、問題利用者への対応のための制度設計という部分もまた、よくわかっているつもりです。

 記事の文脈はそのような様々な制限を回避したいなら買った方がいいし、でも買えない資料は…どうする?という話になっています。ぜひ、(5)もご覧ください。

Posted by: roe | 2005.06.22 at 11:31

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