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2005.04.07

図書館と「法と経済学」(4) : 厚生経済学と図書館

 まあ、これが言いたかったことでして。

 要するに、経済学的分析をやったところで、それは数値によって換算された利益にもとづいているのでしかなくて、「計算」も功利主義的観点にもとづく「理論にすぎない」わけですよ。
 財産制度として著作者財産権を考えたときに、制度設計としておかしいんじゃないの?という批判的手法に「法と経済学」を引っ張り出してくることは正しくても、そこで言っていることが即すべて肯けるものではない。
 「数値化できない利益」はあるのですし、それは「計算に組み込むことができない」のですから。
 また、「数値化できる利益」であっても、そのふるまいは規範的に正しく予想されるものではありません。
 最初に「法と経済学」に批判的な例―限界―を三つ挙げました。これらの批判点は厚生経済学にそのまま引き移すことができると思います。以下にまとめます。三つめは明確な例示がなくてすみません。

・個人の利益は数値化しきれないものがあるということ。
・経済制度設計上合理的な行動が、規範的に正当化されるとは限らないこと。
・功利主義的な最適化においては、重視されない少数者の利益があるということ。

 さて、図書館での「法と経済学」ないし厚生経済学の適用を考えてみましょう。
 図書館研究で厚生経済学を使う有用性は、なんとなく自分にもわかります。
 対象となる利用者は個人でありながら、権利というほど強い利益の許にふるまっているわけでもない。また、公共政策的な分析が必要な、集団としての取り扱いも必要です。

 しかし、自分が批判の中核としたいのは、やはり「図書館は単に財産制度ではない」このことに尽きると思います。著作者財産権に対する著作者人格権の例を想起してください。厚生経済学が使えるところと使えないところがあるということは、方法論上わきまえておく必要があります。
 経済活動ならまだしも、精神的活動をどのように数値的に処理できるか。これには限界が伴います。財産権の出自を考えてみても、実は経済活動の部分はロックにおいてすら貨幣化、剰余価値説あって初めて経済制度と考えられるわけです。
 著作者財産権に厚生経済学を適用しようとするとき、本シリーズの構成を振り返っていただきたいのですが、厚生経済学は20世紀型の人権の考え方、経済制度としての財産権を前提にしています。もちろん、学問の方法としての一般性(超歴史性)や、見えない経済的価値を明らかにするという効用も無視できませんけれどね。
 改めて言い直しましょう。
 厚生経済学が著作権法において有効に、積極的に活用されるべきなのは、著作者財産権の経済的制度の設計の部分においてのみではなかろうか、と。

 少なくとも厚生経済学を扱う人々は、個人の一般的自由の問題との関連をよくよく考えてみる必要があるのではないでしょうか。
 不勉強なので、「自由の問題をよくよく考えてみているから、厚生経済学なんだけどなあ」という反応もあるかもしれませんが、経済学で扱う合理的諸個人の集合を経済学的側面だけで見るということと、様々な振る舞いをする可能性を想定するそれぞれの個人の一般的自由という考え方とは、必ずしも整合しないと思います。厚生経済学が使えるのは、「集合的なふるまいをする」「経済的に制度を検討する」この二つの場合のみに限られるように思われます。

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