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2005.03.09

【稿】『図書館学と情報学、法情報学』感想の感想 (3)

5)(『法情報学』のあり方について)その2

 「従来の法学を『情報』の観点で考える」と言ったときの法情報学。上記の例から、法情報の配置関係を今一度俯瞰的に確かめてみます。
 アクターは、法の執行者(図書館)、市民(利用者)、当該法規を管轄する官庁(文化庁)です。通例、法情報の配置は、詳細には市民にまで届きません。法の執行者と法令を管轄する官庁、そしてその本当の背後には法を制定する政治過程をもつ議会、そして解釈を確定する裁判所がいるわけです。

 私事ながら病院での事例を。
 ある会計に納得できずに(紹介サービスの事後報告にまで利用者負担でお金を取るってんだから…)、「厚生労働省の指針があるのでしょ?それを見せてくださいよ」と 病院事務の方に言ったことがあります。そして、「患者の同意なしに料金を取るのはおかしい」ここに書いてあるじゃないか、と指摘して撤回させました。
 病院の論理は、「皆そうしている」。ちょっと待て。さっきの医者の話ではほとんど治っているし、こちらを紹介してもらった元々の病院はたまたまこちらの大病院があいていなかった時間だったから駆け込んだだけで、仮に同じ症状が出たらこちらの専門の科にまっすぐ来る。元の病院に知らせる必要はない。
 3000円もの金を稼ぐのに、例えばラーメン屋の親父がどれだけ苦労してるかわかってんのか、と。病院にしてみれば嫌な患者ですね。図書館にも困った利用者はいますけれど。

 ここでは、法令の執行者は病院(医者、事務職員)、市民は患者、官庁は厚生労働省です。法令は共通のテキストとなっており、そこで語られるコンテンツ―意味―解釈行為については、実はアクターの間で揺れがあります。
 ここでは、医者が患者たる私に充分な医療内容の説明をした上で、コストがかかることについてきちんとした同意を得なかったことに問題がありました。表面的には私はクレーマー以外の何者でもないでしょうが、事務の方とは冷静にその「指針」に書かれた「テキスト」の理解について話ができ、むしろ該当の医者が、看護学なり医学における情報流通の意義を理解していないという話でオチを付けてくれました。事務の方は「この先生にはよく話しておきます」とは言っていましたけれど、実際上の権力関係上うまくいくとも思えませんでしたけれどね。

 これらアクターの間に流れる法に関する「情報」の配置を、見直してみよう、という議論は、成り立つはずです。
 自分がシリーズ(5)で法情報学を「陳腐だ」とクサしたのは、(6)以降で紹介した基礎法学における法律学方法論でも同等の議論(主体と規範認識の問題)がなされているからですが、法情報学が同等の意味合いを繰り返していても、「従来の法学を『情報』の観点で考える」ことはなお有意義ではないかと思います。「情報」の語を使うことで、過去の事績との関連に混乱があるのが残念ですが、論じられないよりも改めて光が当てられる方がよほどマシだからです。
 これは、古賀氏が研究の主戦場とした立法過程だけでなく、問題を解決する司法の場においてもやはり同様の問題は考えられます。例えば裁判員制度なんかは格好の素材ではないでしょうか。個別ケースの判断における事実認定-規範認識に一般市民がどのように加わるか、ということですから。「認識」「読み」「解釈」という問題は、まさに法にまつわる「情報」の問題と言っていいと思います。ちなみに陪審制と職業裁判官の問題も、法律学方法論の枠内で既に議論はあります。
 なお、人工知能についても同様です。法にまつわる「方法」は普遍的ではありうるかもしれませんが、規範判断(意味の解釈)自体は、人工知能裁判官に任せておけるほど簡単ではない。司法判断と人工知能の研究をしている方々もおられるようですが、法学界でまじめに考えている人は少ないと思いますね。

 上の段落では「法情報」に限って例示してみたわけですが、おそらく他の分野、「医学」「看護学」でも、情報の配置の不均衡について論じる余地は充分にあるし、むしろ図書館・情報学の分野の病院図書館系統の研究で「インフォームド・コンセント」「セカンド・オピニオン」「パターナリズム」について論じられたものを見たことがありますよ。
 問題は、それが一般的な「情報」理論として汎用的に応用できるような形になっていないことです。

 ましてそれは、セマンティックWebだの、「意味論」と名は付いていますが機械検索によってなんとかなるようなものではないということは、言うまでもありません。

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