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2005.03.09

【稿】『図書館学と情報学、法情報学』感想の感想 (2)

4)(『法情報学』のあり方について)その1

 ここで古賀崇氏の業績を軽々に持ち出すとご当人に怒られるかもしれないのですが、自分はこの方の業績に非常に注目しています。のちほど出てきます。

 自分の文章の中で、法情報学には二つのアプローチがあって、分かれてしまっているように見えると書きました。電子情報ネットワークレベルでのそれと、「従来の法学を『情報』の観点で考える」と。この後者の意味をいま一度踏み込んで書いておきます。シリーズ中でも後者を問題としているからです。
 実際、法情報学が「従来の法学を情報の観点で考える」というとき、法情報の社会的配置の問題が意識されていることは多いような気がします。
 図書館屋が接する範囲で、このような法情報学を考えてみましょう。著作権法を例にとります。用語が正確でないのはやっぱりごめんなさい。

 図書館での複写は、法律によって、著作権法の原則の例外として、部分的な複写を認められていますが、更にある程度裁量も認められています。これは「図書館にとっては」前提ですよね。
 しかし、普通の利用者から見れば、なぜそのようなしくみになっているのかわからないどころか、図書館が意地悪をしているようにさえ感じることさえある(言うまでもなく入手不能な資料の全冊複写の場合が顕著)。「サービスが悪い」、法律問題だと認識されないわけです。
 図書館員は法律の内容を説明しますが、図書館員自身も皆が皆納得しているだけの正当性が著作権法にあるかというと、少なくとも自分や周囲の図書館員はいくばくかの疑問をもってもいます。通例、文化庁が有権"的な"解釈を提示しているので、それに従って疑問はそのまま終えることになってしまいます。
 一度ここで確認しておきます。ここで登場するのは、図書館(専門職員)、利用者(市民)、文化庁(当該法令を管轄する官庁)。これらが同じ法律の条文と、実際の利用について、なんだか不具合を感じているわけです。これが図書館における著作権法を例にとった場合の一般的な法状況です。

 ところで、古賀崇氏の近年の労作に、アメリカの政府出版物がなぜ著作権法上の適用を受けない制度になっているか、そしてどのような形で図書館と関係があるかを追った研究「アメリカにおける政府情報と著作権をめぐる議論」『情報ネットワーク・ローレビュー』Vol.2, 2003.11, p.1-19.があります。古賀氏の研究を法情報学的な観点から言えば、米国政府刊行物の著作権法上の位置づけを、情報政策として理のあるところを歴史的に説明してくれていました。結論は、政府情報を著作権法の制限なく流通させることには、民主主義にとって有用であるという説得的な理由付けと、そのための運動があったことを示しています。
 この業績には、喝采を送りました。図書館で日本の政府刊行物を扱う立場に立ってみれば、日本の著作権法の不備を日々痛感するからであり、このような「情報学的な」研究が(従来の言い方で言えば「比較法的な」研究が)、現行法を理解する上で有用であることもわかるでしょう。

 自分が彼の業績を賞賛するのはなぜか、「法情報学的に」述べてみようと思います。
 図書館で日常的に行われている著作権運用については、完全に否定する立場ではないにしても(法治国家ですから)、法が適用される現場は、おかしな点については運用の是正にせよ法改正にせよ、現場での法情報のありかたについて、立法府や法学界に対してモノを言っていくべきだと思うからです。図書館員としてではなく、法の執行機関たる組織体たる図書館として。おそらくこの法状況がわかっていてモノが言えるのは、不特定少数の利用者ではなく、ベンダーたる図書館自身でしかない。
 著作権法に詳しい図書館学の先生に、実際の図書館での著作権法の丹念な運用の実際を説明したところ―自分は法学部卒でもあるので、ある程度理不尽な運用でも、線を引かなければならないところではばかばかしくても線を引かねばならないと積極的に思っています―、「そんなの人件費の無駄じゃん」と一蹴されたことがあります。先生に悪意はありませんでしたし、半分は冗談でしょう。でも、先生も、図書館での丹念な運用を半分冗談のように受け止めないではいられないようでした。
 古賀氏の視点は、そのような図書館でも疑問をもっている事態に、少しでも解明の光を当てつつあるように見えたのです。

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