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2005.03.29

図書館情報学批判(2) : 「数値による評価指標」の逆機能

 これは図書館情報学の学界では、糸賀雅児先生らの「パフォーマンス指標」に関する成果や永田治樹先生らの研究グループの活動を指します。最初から断ってしまいますが、彼らの研究成果に対する私の理解は、次回に述べるもうひとつの逆機能の状況説明に比べると、不充分です。
 また、実践的な学問として図書館活動に使えるツールを提供しようと見られる先生方の姿勢には頭が下がります。図書館の外部に説明するためにも数値化による自己評価は必要であり、数値化も評価のための単なる道具でしかないこと、限界があることを彼ら自身が述べていることも知っています。しかし、申しわけありませんがそれらの研究姿勢には目をつむらせてください。ここでの批判もそれらを含んだ上であえて申し上げます。

 述べたいことがあります。

 一点め。それは、数値による評価指標は実際には、自らの首を絞める形になっていはしまいか、という点です。指標が目標になってしまう。これは、当初から想定されていたことだったのでしょうか?
 永田先生の口から直接「現状のままよりも利用者満足という値が出た方がいい」と伺ったこともありますが…。別の文献では「限界がある」「万能のように受け取られても困る」とも述べておられて、文脈に依存する話だったように推測します。

 二点め。数値化されない業務については評価できないこと。本ブログのほかの記事でもよく述べていて、自分はこれこそ図書館の上位の問題だと考えていますが、特に認知型の情報提供については指標は何も言いません。「利用者の満足度」という形で実現しようとするかもしれませんが、それは、ひとつの便法です。結果、一点めにも絡んで「数値化できるものが目標となる」という逆機能を果たしてしまうのです。

 以上が「数値による評価指標」の逆機能についての私の主張です。
 しかし私の立場を改めて表明しておきますと、私は「数値による評価指標」は必要である、とする立場です。サービスの達成度や利用者の動向を測るためには、数値化できるものは積極的に数値化すべきであり、統計学の適用は当たり前のようにされてしかるべきと考えています。

 問題は、図書館界にとってこのような評価・統計技術がオーバーテクノロジーであるということでしょう(統計上の検定や多変量解析は必要性を感じながらも私は理解できていません)。逆機能化はそのような技術にあまりにも慣れておらないために、起こっている現象と言えるかもしれません。
 ただ、この分野に関心をもつ研究者も経営者も、経営主体たる図書館の本来の目標を見失うようであってはならないし、慎重になっていただきたい、配慮していただきたい。そう考えるので、本記事のような主張をさせていただいた次第です。

 さらに追記しておきますと、評価指標が必要だからと言って、経営評価の問題をよりよく解決するための方策は、経営学なぞにはないと思います(自分の近くにこのような指向をもって経営学を学ぼうとする者がいるので)。経営学は、経営学を適用できる対象が把握できて初めて効果がある「道具」なわけで、無論「道具」の性質を理解しないと使えないでしょうが(その意味では無意味ではない)、対象をよく知って、適切なところに適用しないと、道具は暴発するだけです。
 むしろ現在の図書館情報学に必要なのは、経営学に対応できる情報理論、社会理論であると思います。
 民間企業に、経営指標に関する業務に携わった友人がいますが、同様のコメントが出てきました。理屈だけじゃ、ダメなのよね。現場を見ないと。

 ぜひ、過去の研究業績や最近の動向から、新しい知見や私の誤解があれば、お気づきの方、ご指摘ください。

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