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2004.11.15

見る自由と検索サービスの前提

 見る自由、見ない自由とそれにまつわる検索サービスという構図は、図書館でも同じことが言えると思う。前日のエントリを承けて、敷衍してみよう。
 それぞれの図書館がもつ社会的インパクト、役割によって、所蔵資料の利用制限はかけられうる。資料の管理をしている図書館側からすれば、「裁量がある」と言うだろう。「適正手続」まで用意するに違いない。
 しかし、その判断が妥当か否か、検索者の納得を得るためや議論をするためにも、利用制限の理由は提示すべきである。どのような選書方針か。利用制限の理由は。一般に図書館はこれを十分に明確に提示しているとは思えない。

 さらにしかし、いまの図書館では日常的にはこのような議論をする以前の状態だというのが実態だろう。
 図書館の目録がWebベースのOPAC(Online Public Access Catalog)となって、感覚的にはGoogle同様の検索窓に適当にタームを入れて検索できるようになって久しい。しかし、ヒットしないならヒットしない理由を、明示しないのはおかしい。単に茫漠としているだけ…そこに陥穽はある。
 図書館の目録は、明らかに有限の資料群(蔵書)から統御された規則に基づき人的な労力を投入して作成されたデータ群であり、有限の集合から検索するからこそ、(この検索語でのヒットは)「xx件」「なし」と意味のある「情報」が生成されるからだ。どのような規則でデータが作成され、どのような選書方針のもとに構成された集合なのか。それがわかるとわからないとでは、「情報」の意味が全然違ってくる。何という集合からどのようなルールにもとづいて取り出したかが判然としないのでは、ブラックボックス以外の何でもない。
 GoogleやYahoo!との根本的な違いは、有限な集合に丹念な統御を加えているというところにあるはずだが、当の図書館自体がOPACのヘルプをわかりにくいままにしている。どこにGoogleやYahoo!との違いがあるのか。その辺のしくみをわかりやすく説明しなければ、検索式を作るどころか「適当に」単語を入れておしまいといった現状では、何の違いもない。業界で言われている「情報リテラシー」「利用者教育」といった大仰なことば以前の、図書館のしくみそのものに関わる問題だろう。
 GoogleやYahoo!よりも、Amazonやbk1と比較するともっとわかりやすいかもしれない。実際あの単純な窓でも、「書評」が付いているゆえに、有効な検索ができることも多い。

 最後のネタは、図書館で働いている自分の実体験によるものです。amazonが、書誌情報しか掲載されていないOPACなんかよりも、役に立つことがあります。図書館の目録が提示すべきDBとしての整合性による有益さよりも、amazonならではのその付加価値において、単なるワケノワカランOPACより価値ある情報が得られる、と言いたいのです。
 驚いたのはamazon.comに付いている書評には、Research Libraryのための書評グループが付けているものがあって、こうしたものはかなり信頼性があると見ました。
 自分の職場では、目録規則に則って丹念に書誌情報を作成しています。しかし、それだけの検索のしくみ、資料群の見せ方がないと、Googleやamazonと比べても大して効果ないんじゃないか。経営資源を投入していることに対する社会的な説得力が、あるんだろうか。そんな疑問に毎日さらされながら仕事をしています。

【2005.1.28追記】
 前回の記事については、あまりにヒットが多くて気になっていた(2004.11.30の記事)。
 検索エンジンの使い方に対する疑問の論理は、当ブログ内での2005.1.212005.1.22の記事を、コメントまでご参照いただきたい。りんどうさんのおかげで、もう少し言いたいことがまとまっていると思う。
 また、当時私の拙い記事に反応いただいた「夏のひこうき雲」の記事でもさらにコメントをいただいた。感謝。

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